ねこしごと

ねこと思い出ばなし、ちょっぴり金魚とカメ

俺はおにい、渋い男

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俺の名はおにい

兎にも角にもこのウチの大黒柱でさあ

 

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奥ゆかしい性格と

この黒いカラダのせいなのか

よく主張しないオトコと言われやす

  

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俺だって

自覚してないわけじゃないんでさあ

たしかに

目立たないといえば目立たないこの毛色

とくに暗がりや眼鏡のオバサンは要注意

 

あのオバサンどうやら

眼鏡じゃ視力がイマイチらしくて

朝晩フラフラ歩いては

あっちでネコにガンッ!

こっちでネコにボンッ!

手当たり次第に体当たりしていやすぜ

 

おお、危ねえ危ねえ

 

俺なんかいつも

蹴られたりゴミ箱と間違えられたり

年中そんなことばかりなんでやす

 

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しかもあのオバサンたら

八つ当たりが大好物で

そのたんびに俺を罵倒するときたもんだ

 

おにいっ!

黒い黒い黒いっ!

なんで

黒いんだよっ!

 

・・・ふうっ

 

ああ

まったく俺は

やんなっちゃうんでさあ

 

でもそういえば

 

俺のイケてる美少年時代

素敵アウトドアライフを楽しむ毎日だったのに

あのオバサンのせいでこんなことに

 

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まあ

俺たち親子とあのオバサンたち

生まれた時からなにかと縁があって

ゴハントイレも世話にはなったとはいえ

視線感じて振り返ると

あのオバサンが

ニヤニヤしながら俺見てるもんで

そのたび

俺はゾーッとしたもんですぜ

 

ある日俺がひどいケガして

しんどくてじっとしていたら

あのオバサン

 

今こそ

ゲットだぜいっ!

 

そう叫んで

おかしなボール投げたかどうかは

俺はちょっと忘れやしたが

まあ結局

有無を言わさず

俺はそのまま拉致られることになりやした

 

そんなこんなで突然始まった新生活

俺が連れて来られた

あのオバサンのウチには

他にも俺たちの仲間がいやした

 

妖怪みたいなサビ柄の婆さま

可愛い顔してボディが残念な年上の姉さん

 

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へぇー

どっちも

俺のタイプじゃねえや

 

俺はちょっとガッカリしたんでさあ

 

でもすぐに

親父もお袋も俺とおんなじ妹たち

あんこちゃんおまめちゃん

チビのままやって来たもんだから

俺は毎日子育てで大忙しになりやした

 

でっかいチビちゃん姉さんはおまめちゃん

俺はもっぱらあんこちゃん

ふたりで手分けして子育て頑張りやしたよ

ああ

あとあのオバサンもまあまあ働いたかも

 

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そういやあ

あの婆さまのクールっぷりは徹底していやした

あんな可愛いチビたちなのに

ガン無視していやしたしねえ

 

ただ

いまだにあんこちゃんが

俺のオッパイちゅうちゅう吸うのには

ちょっと困りもんなんでやんすが

 

子育てもひと段落したもんで

やっとのんびりできるかと思いやしたが

そのあとも

ノミダニ寄生虫だらけのごま子ちゃん

乾物みたいに干からびたデビちまが来たり

 

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俺は気の休まるときがないんでさあ

 

実際、連れて来られたデビちまを見て

俺は思いやしたよ

 

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さすがに

こりゃあダメかもな

あのオバサン

きっとガッカリして

また泣きやすねえ

 

ふうっ

今回ばかりは

俺には

見てることしかできやしねぇ

 

ところがこの干物みてえなチビたち

自力で頑張って

ちゃんと大きくなりやがったんでさあ

たいしたもんですぜ

 

・・・そうそう

あのオバサンも

なかなかよくやりやしたよ

 

それからまもなく

病気してた婆さまが逝っちまって

結局あのオバサンは

メソメソメソメソ泣きやしたけど

 

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ギーギー

わがまま言いながら

あれだけ長生きすりゃあ

きっと婆さまも満足でさあ

 

俺はあのオバサンに

いつかそう言ってやろうと思いながら

じつはまだ言えてないんでさあ

 

そのかわりと言っちゃあ

なんだけど

 

俺はこっそり気を使って

それ以来ずっとあのオバサンと

一緒に寝てあげることに決めたんでやす

 

そりゃあそんなみっともないこと

俺だって嫌で嫌でしかたないですぜ

だけどまあ

甘えたフリしてあのオバサン喜ばすのも

俺の大事な仕事と自分に言い聞かせて

毎晩苦痛に耐えているんでさあ

 

このあいだの晩も

ねちっこく甘えてあげようと

全体重で思いっきりのしかかって

寝てるあのオバサンののどくび

全力で圧迫してあげたんですぜ

 

どうでやんす?

俺の甘えっぷりは・・・

 

それなのにあのオバサンときたら

 

重いーっ!

黒いーっ!

鬱陶しいーっ!

 

よく見たら

白目むいて苦しんでたんでさあ

 

しかも俺たちふたりっきりの時

俺がこそっと近づいて

あのオバサンのカサカサの手の甲

よくそっとチュウしてやるってえのに

 

こらっ!

オッサン!

ばっちい

鼻水つけんなっ !

 

まったく

冗談じゃねえですよ

照れかくしにも

ほどがありやすぜ

あのオバサン・・・くすっ

 

だいたい

このウチの女子たちは

なんにも気づいてないんでさあ

無口で優しいこのオトコ

遠くからじっと見守っているからこそ

女子のみなさんが

好き勝手に大暴れできてるってえことを

 

想像してみてくだせえよ

あのトンチキ小僧のちまお君

ここの唯一のオトコだったとしたら

いったいこのウチがどうなっちまうか・・・

 

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それと

これだけは言っておきやすぜ

 

俺の写真が

似たようなもんばっかりなのは

あのオバサンの腕不足だけじゃあなくて

俺が写真嫌いの

シャイな昔かたぎのオトコだからなんでやす

 

自分

ホントに不器用なんでさあ

 

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