むかしむかしあるところに
ちまお太郎という名の
明るく元気なネコの男の子が
おっ母代わりのオバサンや
ほかのネコカメ金魚たちと
それはそれは
のんきに暮らしておったそうじゃ
このちまお太郎は
とにかく
フレンドリーな性格でのお
人間だろうがネコだろうが
ましてや
ジジイのカメだろうが
相手の迷惑なんか
いっさいおかまいなしで
誰彼かまわず
グイグイ絡みたがるという
それはそれは
アグレッシブな小僧だったんじゃと
最近じゃあ
このちまお太郎はのお
すっかり色気づきおって
一緒に暮らす美人娘たちを
朝から晩までしつこく追いかけ回しては
シャアシャアシャアシャア
いつも怒られておったそうなんじゃ
ある日のことじゃった
このちまお太郎という小僧は
おっ母代わりのオバサンの家で
いちばん年上で
いちばん大きな（いちばんデブな）
でっかいチビちゃんに甘えたくて
とっても気さくに話しかけたんじゃと
親方！親方！
うふうふうふうふ
どうか
このボクを
かわいがっておくれよ
ボクは
親方の胸を
ぜひお借りしたいのさっ
まあつまり
ほかの子たちみたいに抱っこして
いい子いい子
そうして欲しかっただけらしいんじゃが
このちまお太郎ときたら
ちいっとばかし
バカでおっちょこちょいだったもんで
ついつい口が滑ったんじゃな
ちょうどその頃
おっ母代わりのオバサンと毎日観てた
大相撲初場所
こいつの影響をモロに受けおって
思わず相撲用語が口をついて出ちまいおった
で
結果はこうじゃ
小僧よ
かわいがってやるぞよ
案の定
親方？にバッシバシしばかれて
ボッコボコにされた
この残念なちまお太郎はのお
おんおん泣きながら
おっ母代わりのオバサンに抱きついて
こう尋ねたそうじゃ
ねえ、かあさん・・・
どうしてみんな
ボクのことをいじめるのさ？
ん？
誰もいじめてなんかいねえべ？
かあさんはウソつきだなあ
ちまくんはだまされないぞっ
ウソつきかあさんの
クソバカ婆あめっ！
コレッ！そげな暴言はやめんか！
だってボクは
こんなに気のいい男なのに
なんでみんな
ボクの良さを
わかってくれないのさ？
なんだべ・・・
めんどくさい男じゃのお
しかもウソつきかあさんって・・・
あんこちゃんの次は
アンタまでウソつき呼ばわりするんか？
まあ、別にいいがのお
いじめてるというよりは
ほかのみんなはオトナなもんで
アンタのトンチキぶりが理解できなくて
ちょっとだけ
距離感がつかめないって感じだべかなあ
トンチキ・・・
リカイ・・・
キョリカン・・・？
・・・ふーん
ちまくんはもう
人付き合いってものが
なんだかよくわからないよ
・・・そりゃあ困ったのお
ってか
そもそもアンタはヒトではねえべ？
ついでに言うと
オバサンはな
アンタのホントのかあさんじゃねえぞ
まあ、でも
たぶん
わからなくてもいいんじゃよ
みんなそれぞれ性格が違うんじゃし
それなりに相性もあるからのお
無理しなくてもいいんじゃねえべか？
あれれ？
かあさんはいま
なんか凄い良いこと言ってるぞ？
いいか？
ちまお太郎よ
その立派な耳
かっぽじってよく聞くんじゃ
・・・うん
これはな
人間でもネコでもなんでも同じじゃぞ
利害が対立していたり
方向性が違っていたり
育った環境が
まったく違っていたり
いろんな理由があるけれど
みんながみんな
わかりあうべく努力しよう
そうすりゃ
いつか必ず理解し合える
とか
話せばわかる
とか
そんなこたぁ
とうてい無理な話なんじゃよ
ましてや
どうして
理解してくれないの？
なんて考えは
ちょっと我儘だと思わねえべか？
うーん、なんつうか要するに
まあ
ヒトはヒト、自分は自分
所詮そんなもんなんじゃ
そうわかった上で
どう折り合いをつけるか
それさえわかっていれば
なんとかなるんではないかのお
かあさんはな
むかーしむかしのOL時代
やたらハマったことがあってのお
そんときに
昆虫大好きネコ大好きで知られる
あの養老先生のご本を読んで
勝手な解釈じゃが
そんな風に思うようになったんじゃよ
そしたらな
なんとも不思議なことに
それからはなんかいろいろなことが
やたら楽になった気がするんじゃ
だから
アンタはそのままでいいんではないかのお
ただな
ちいっとだけ空気ってえもん
読めるようになってさえくれればなあ
どうじゃ？
ちまお太郎よ
わかってくれたかのお？
ん？
ちまお太郎め
話に飽きて走って行っちまいおった 💨
おいコラ！
待て待てちまお太郎ってばよ・・・
あ！
あんこちゃんよ！
早く逃げるんじゃあっ！
先ほどの動画をわざわざコマ送りにしてよく見てみたら
あんこちゃんがとてもおブスでした・・・
むむむむむ
まったくわかっとらんようじゃな！
このバカ太郎が！
どうやら残念なことに
バカのちまお太郎には
なんにも伝わらなかったようじゃが
それでも
このおっ母代わりのオバサンは
まあ、とはいえ
今回は
ちぃとだけちゃんと語れたぞ
そうなにげに満足しておったという
そういう
深い深いお話じゃったんじゃと！
とっぴんぱらりのぷうっ 💨
過去の日本昔話シリーズたち ↓
このシリーズ
気がついたらもうこんなに続いていました
わたしの脳内ではこれらはつねに
女優の市原悦子さんが
あの声で
あの口調で
語ってくれていましたので・・・
ですから
なんだかとにかく寂しくてたまりません
心よりご冥福をお祈りします
【衝撃の展開】香川県に伝わる『桃太郎』（朗読：市原悦子）【おやすみ日本ぷち×NHK1.5ch】
