どうも、俺はおにいと言いやす
おかしな名前とお思いでしょうが
正真正銘
これが俺の名前なんでさあ
最近じゃあ
やいコラ、おじい!なんて
クチの悪い女たちに
からかわれたりしやすけどねえ
そんなおふざけなんか
俺はまったく
相手になんてしねえんでやすよ
だって
俺は大人の男でやすからねえ
家族みんなで
気ままな外暮らしをエンジョイしてた
まだ小僧だった頃
俺はちょいと足に大怪我しちまって
ああ
コイツは痛えや
これが
話に聞く
怪我ってえヤツか
確かにコイツは
シンドイもんだぜ
なんせ生まれて初めての男の喧嘩だ
小僧の俺が負けるのはしかたねえ
・・・ふうっ
しかし痛えなあ
・・・ん?
いつものオバサンが
じとーっとコッチを見てやすねえ
俺はその時
なんかイヤな予感がしたんでやすよ
いつものオバサンといつもの婆さまが
なんかコソコソ話してやがる・・・
いったい
この俺を
どうしようって・・・
あっ!
どうにも動けない隙を突かれた俺は
このオバサンにガッツリ捕まえられて
そのまま病院送りでさあ
受付のお姉さんに
猫ちゃんのお名前は?
聞かれてテンパったこのオバサン
いつも勝手に呼んでたあの呼び名を
そのままお姉さんに伝えちまったらしい
あ、えーと
おにい君でお願いします
そう、この日から
俺は正式に
このウチのおにいになったんでさあ
病院で切ったり縫ったりされて
帰りには
オバサンの財布は
ますますすっからかんになったらしいが
それはしかたねえですぜ
猫と暮らすってのはそういうもんだ
いくらオバサンだってそんなこたあ
もちろんはなから知っていたに
きっと決まっていやすよ
なんせオバサンの家には
もうすでに二匹もいたんでやすからね
そのうちすぐに
めんこいチビ助の
女の子たちがやって来やした
ベージュがあんこちゃん
白黒ハチワレがおまめちゃん
こりゃあ
きっと
賑やかになりやすぜ
俺はそう思ったもんですよ
よくよく聞いてみりゃ
どうやらこのかわい子ちゃんたちは
俺のホンモノの妹だって話だ
それを知った俺は
なんだか嬉しくなって
じつに楽しい気分になったもんでさあ
こいつあ一丁
このチビたちを
ちゃんとお世話して
オバサンを
楽させてやりやすか
なんだかんだ言ったって
なにかと恩義あるオバサンだ
それくらいするのが
男ってもんなんじゃあないですかねえ
それこそ
おにいと名付けられた
この俺の本領発揮というもんですぜ
でっかいチビの姉さんも
珍しく動いて協力してくれやしたし
俺が全身全霊頑張って
可愛がって可愛がって可愛がった結果
今じゃあ
あんこちゃんは俺たちの親父そっくり
ビッグフェイスどすこい娘
かたや
おまめちゃんは誰に似たのか
喧嘩上等チンピラヤカラ娘
えーと・・・
俺の育て方に問題が?
・・・まあ
こういうことも
世の中にはありやすよ
可愛いことには
なんの変わりもねえや
どうでやす?
可愛いでやしょう?
妹たちの子育ても一段落したと思ったら
その後もいろいろありやした
今度は
俺と縁もゆかりもねえチビたちが
次々と連れてこられたり
そのあいだに
腎臓を患ってた婆さまが逝っちまったり
そんなこんなで
オバサンときたら
なかなかどうして忙しい毎日ですぜ
なんでも近ごろのオバサンは
渋いこの俺よりも
若い小僧のちまおくんが
どうやらお気に入りらしいや
アイツときたら
飛んだり跳ねたり
滑ったり転んだり
いつだって大騒ぎで
とうとう女の子たちにイジメられて
とんでもねえ粗相までしやがった
アレはアレで
俺にも
懐いてくれてるし
可愛い愛嬌もんだから
オバサンの溺愛も
まあ、しかたねえ
いいんでさあ
俺はべつに・・・
俺はいつだって
黙ってウチの女たちを見守っていやすよ
昨夜だってそうなんでさ
俺は夜更かしのオバサンが眠るまで
じーっとそばにいたんですぜ
それなのに
オバサンときたら気づきやしねえ
俺はずっとここにいたってえのに
・・・はっ!∑(゚Д゚)
キモいっ!
おにい、キモいっ!
それに超黒いんですけどっ!
ぜんっぜん見えてないしっ!
まったくしようのねえオバサンだ
自分のかすみ目を棚に上げて
俺の毛色のせいにしやがるなんて
しかも
黒猫の写真は難しいからって
撮るのは他のヤツばかり
・・・まったく
黒猫だからって理由で
俺の写真だけ
いっつも使い回しときたもんだ
ん?
なんかおかしいですぜ
同じ黒猫のはずのデビちゃんなのに
パシャパシャパシャパシャ
そういやしつこく撮ってやすねえ
しかもよくよく聞いてみりゃあ
かわいいねえ
かわいいねえ
デビちゃんは真っ黒で
ホントにホントに
かわいいねえ (๑˙❥˙๑)
・・・へえ〜
そうですかい
まあ、いいんでやす
俺は大人の男でやすからねえ
この俺が見守ってるおかげで
今日もウチの女たちは
こうして
リラックスしていられるんでやすから
・・・いや
それにしても
ちいっとばかし
緊張感が無さすぎる気もしやすが・・・
せっかくいただいた
貴重な俺の出番でやすから
この俺が
いかにひっそり
みんなを見守ってきたか
ここはひとつ
俺がコソッと写り込んだ写真でも
まとめて見てもらいやしょうかねえ
どうかお願いでやすから
背後霊だとか
心霊写真だとか
いくらお盆シーズンだからって
そんなつまらないこと
ヤアヤア騒がないでくだせえよ
どうも写真は
苦手でいけねえや
こんな不器用な男で
ホントすいやせん
おにい君の独白シリーズ
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